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伝統の「貯蔵みかん」にこだわり ベテランみかん農家・高橋誠さんに直撃! 三ヶ日インタビュー企画第1弾

伝統の「貯蔵みかん」にこだわり ベテランみかん農家・高橋誠さんに直撃! 三ヶ日インタビュー企画第1弾

みかん農家 高橋誠さん

三ヶ日の中でもみかん作りが盛んな只木地区にて、約4.5haの畑で2,000本ほどのみかんを育てる高橋誠(たかはし まこと)さん。貯蔵みかんに強いこだわりを持ち、常に挑戦する心で新たな品種の栽培にも積極的に取り組んでいます。2020年度の静岡県貯蔵みかん品評会では、青島みかんの枝替わり品種「陽一郎」で農林水産大臣賞に選ばれました。 今回は、みかん栽培歴42年の大ベテラン・高橋さんに、みかん栽培にかける想いやこだわりをお聞きします。

「貯蔵みかん」へのこだわり

農林水産大臣賞を受賞した「陽一郎」をはじめ、貯蔵みかんに力を入れている高橋さん。「貯蔵みかん」に込める想いを伺いました。

「貯蔵みかん」について教えてください

みかんは、収穫のタイミングによって早生、中生、晩生に分かれます。例えば、10月~11月上旬にかけて収穫される早生みかんは、収穫後すぐに出荷されます。

それに対して、11月下旬~12月頃に収穫が始まる晩生のみかんは、収穫したての段階では酸味が強く、甘味があまり感じられません。そこで、収穫してからしばらくの間は貯蔵庫に入れて熟成させ、酸味の角が取れてまろやかになった頃に出荷します。 このように、収穫後に貯蔵というプロセスを経て出荷されるみかんのことを「貯蔵みかん」と呼びます。

なぜ「貯蔵みかん」に力を入れているのでしょうか?

三ヶ日は昔から、貯蔵みかんの生産が盛んな地域として知られています。各みかん農家は家に貯蔵庫を持っていて、収穫したみかんをそこで貯蔵しておき、時期がきたら出荷します。その伝統を守りたいと思ったのが大きな理由です。

また、貯蔵みかんには農作業の忙しさを分散させる効果があります。みかんの収穫期には、収穫と同時にみかんを選別する作業も必要となり、とても忙しくなります。収穫後すぐにみかんを出荷しなければならない場合には、作業が間に合わなくなることも考えられます。 その点、「貯蔵みかん」は収穫してから出荷するまでに一定の時間を置くことができるため、作業が集中せず、無理のない範囲で進めることができます。

「貯蔵みかん」あれこれ

私の家では、50坪くらいの倉庫の中でみかんを貯蔵しています。倉庫は杉の板で2か所に区切り、適度に風が通る状態を作っています。

みかんは「ロジ」と呼ばれる木箱にきれいに並べます。このロジを10段ほど積み上げ、出荷のタイミングまで貯蔵します。

私がみかん栽培をはじめた頃は、みかんが品薄になる3月頃になってもあまり値段が高くならずに苦労した思い出があります。 祖父母がみかんを育てていたころには、5月の浜松まつりまでみかんを貯蔵してお話を聞いたこともありますが、最近は、貯蔵みかんが出回るのは3月くらいまでです。

「貯蔵みかん品評会」で農林水産大臣賞を受賞

高橋さんは、静岡県が主催する貯蔵みかん品評会に「陽一郎」という品種のみかんを出品し、見事2020年度の農林水産大臣賞に選ばれました。貯蔵みかん品評会では、収穫してから一定の間、貯蔵庫で貯蔵されてから出荷される「貯蔵みかん」の質が評価されます。

「貯蔵みかん」へのこだわりを大切にしながら、栽培歴42年にして積極的に新たな挑戦をし続けています。

「陽一郎」とは、どんな品種なのでしょうか?

「陽一郎」は三ヶ日で生まれた品種です。青島みかんの枝替わりとして発見されました。青島みかんと「寿太郎」という品種の中間くらいの性質を持っています。

剪定が難しく、収穫量も少なめと作りこなすのは簡単ではありませんが、貯蔵性や果肉の質が素晴らしく、味もとてもよい品種です。

三ヶ日は貯蔵みかんの産地であり、陽一郎は貯蔵に最適な品種です。今後、栽培面積が増えて生産量を増やすことができれば、「陽一郎」の特色を活かした特別な「貯蔵みかん」を出荷できる日が来ると思います。

美味しいみかんを作り続ける秘訣を教えてください

まずは、畑へ頻繁に通うことです。みかんの木をしっかりと観察し、病気になっていないか確認します。

また、摘果を丁寧におこなうことも心がけています。木にたくさん実がなり過ぎると、一つ一つの実が大きくならなかったり、甘くなりにくかったりするためです。 実を落とすのはもったいないような気もしますが、美味しいみかんをつくるためには摘果をきちんとおこなうことが大切です。

そして、JAみっかびの技術職員の皆さんからのアドバイスを守ること。肥料や農薬を使う時期や量、枝の剪定方法など、丁寧にサポートしてもらえるのは助かります。

高橋さんのみかん作りの基礎はどこで培われたのでしょうか?

30年ほど前に、近隣のみかん農家と集まって、みかんの栽培技術を高めるための只木地区同志会を立ち上げました。お互いのみかん園地を回ったり、貯蔵庫や選果の様子を見せあったりしてきました。雨の日にはみんなで勉強会を開き、みかん栽培に関する本を読むこともありました。晴耕雨読という言葉がありますが、より美味しいみかんを作るために仲間と切磋琢磨しながら努力し続けました。

只木同志会の仲間だけでなく、ほかの地区の同志会のみかん畑を見せてもらったり、交流会を開いたりすることもありました。技術を囲い込まず、お互いに共有することで三ヶ日のみかん作りの技術が底上げされていると思います。

現在は代が変わって、息子の世代が同志会に加入しています。2世代にわたって今も活動が続いているのは感慨深いです。 みかんの栽培に力を注ぐ農家との横のつながりができたことは、今の私のみかん栽培の礎になっています。

栽培歴42年・ベテラン生産者として思うこと

今後の目標を教えてください

みかん農家に生まれて、自分もみかん農家になることが使命だと思っていました。

あと10年はみかん栽培の現場でみかん作りに携わりたいと思っています。 「陽一郎」をはじめ、新たなみかんの栽培にも積極的に取組みながら、美味しいみかんを作り続けます。

JAみっかびの若手生産者に期待することを教えてください

お金ももちろん大切ですが、それだけにこだわるのではなく、「美味しいみかん」を目指して栽培技術を磨いていってほしいと思います。

三ヶ日でも、みかん農家の数は減少しています。伝統ある三ヶ日みかんの魅力を伝えることで、今ある畑の保全やみかんの栽培に取り組んでくれる人が増えることを願っています。

おわりに

産地や品種に関わらず「みかんはみかん」と一括りに考えられることも多いと思いますが、今日お話ししたように、みかんの品種や栽培方法、出荷の時期によって、みかんの味には大きな違いがあります。特に、私が力を入れている本貯蔵みかんは、年内に収穫・出荷されるみかんでは味わえない特別な風味があると思っています。

手間はかかりますが、私たち生産者は一つ一つの果実に心を込めてみかんを作っています。ぜひ美味しいみかんをたくさん召し上がっていただきたいと思います。

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