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農家が教える温州ミカンの育て方~みかん栽培の1年間~

農家が教える温州ミカンの育て方~みかん栽培の1年間~

はじめに

何気なく食べているみかんは、農家さんが時間をかけ丹精を込めて育てた作物です。どのような作業をしているかを知ることで、みかんの美味しさがより一層感じられるはずです!

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年間を通しておこなう作業

果樹は一般的な野菜と異なり、数十年にわたって実がなり続けます。そのため、果実が木になっている時期だけでなく実が付いていない時期にも、適切な管理を続ける必要があります。


農薬散布

農薬には、害虫や病気から樹や果実を守る効果があります。特に、出たばかりの花や芽、若い果実は組織がやわらかく、守ってあげる必要があります。

花や実が小さい時についた傷は果実が成長したとしても消えることはないため、実が肥大するとそれに伴って大きく引き伸ばされ、外観を損ねてしまいます。また、実が若い時期に受けた傷は、収穫期までにはカサブタ状になって治癒しますが、収穫期直前に傷がつくとイタミの原因となってしまいます。

さらに、病気や害虫の食害は樹を弱らせてしまうこともあります。こうした病害からみかんの木を守るために、産地全体で定めた薬剤を予防的に散布しています。

施肥

美味しいみかんを作るためには、十分な栄養を与え、よく実をつける健全な樹を作る必要があります。肥料を施すと根や枝が強くなり、木が健康になるため、果実にも十分に栄養が届いて甘みのある美味しいみかんを作ることができるようになります。

整枝・剪定

前シーズンの収穫が終わったら、伸びすぎた枝を短くする「整枝」や、増えすぎた枝を減らす「剪定」をおこないます。枝が多すぎると摘果や収穫の妨げになったり、内側の葉や果実への日当たりが悪くなったりします。また、果実がつきすぎて木が疲弊してしまうことも考えられます。そのため、整枝や剪定や重要な作業です。

みかんの木の育ち方は整枝や剪定によって決まると言っても過言ではありません。大きな木になるように育てて多くの果実をつけさせる方法もあれば、木をコンパクトに育てて少数の質の高い果実をならせる育て方もあり、みかん農家の数だけ整枝・剪定の方法があると言われています。

摘蕾(てきらい)

地域や品種にもよりますが、みかんは5月頃に花が咲きます。「摘蕾」は、花が咲く前に蕾を落として間引きをする作業です。

間引きには大きく2つの目的があります。1つ目は、間引くことで養分の分散を防ぎ、1つ1つの果実を大きく甘く育てることです。そして2つ目は、柑橘類でよく発生する年による着果量の大幅な変動を予防するためです。一年ごとに着果量が減ったり増えたりする現象は「隔年結果」と呼ばれます。

定植

苗木の定植も春におこないます。育苗には1〜2年もの時間がかかり、接木の手間も必要となるため、多くのみかん農家は苗木屋から買ってきた苗を利用しています。定植したばかりの木にも花が咲き、放っておけば実がなりますが、最初の数年は木がきちんと大きく育つように全ての蕾を摘蕾します。

みかんの木について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

花が散ると、みかんの果実が膨らんできます。着果から収穫まで、果実は半年以上も樹上で生長を続けるため、この間には特に多くの作業が必要になります。

摘果

「摘果」は、成長途中の果実を落とす間引き作業で、摘蕾と同様に養分の分散を防ぎ隔年結果の影響を和らげるためにおこなわれます。7〜8月の緑色のみかんは、皮が厚くて剥きづらい上に非常に酸味が強く、そのままでは食用には向かないため廃棄されることも少なくありませんが、みかんの味を活かして加工品に利用されることもあります。

摘果にも整枝・剪定と同様に千差万別の方法があります。膝より下や、頭より上などのわかりやすい基準に基づいて作業する農家もいれば、葉30枚につき1果を残す、という厳密な基準を設けている農家もいます。いずれも、個々のみかん農家が長年の経験から編み出した、美味しいみかんを作るための方法です。

マルチシート

マルチシートを株元に敷く作業も夏におこなうことが多いと言われています。マルチシートの目的としては雑草の抑制、地温の維持が挙げられますが、最も重要なのは光合成の促進と、水分の制御です。

みかんは、葉が太陽の光を吸収して光合成をおこなうことで甘みが増すと言われます。そのため、マルチシートが太陽光を反射して葉に当たる光が増えると、光合成の効率が上がってみかんがより甘くなります。

また、みかんの木は、水をたくさんやる必要がある時期と、あまり水をやらずに乾燥気味の状態にしておく時期があります。特に、収穫期に土の水分が多すぎると、みかんの味が薄くなってしまいます。そこで、マルチシートで根元を覆って雨水が根に吸収されないようにすることで、悪天候でも美味しいみかんをつくることができるのです。

秋〜冬

秋になるとみかんはオレンジ色に変化していきます。収穫前はもちろん、収穫してから出荷するまでの間にも様々な大切な作業があります。

鳥害対策

気温が下がってくると虫が少なくなり、餌を求めた鳥がみかん畑にやってきます。野生のみかんはかつて、鳥に種ごと果実を食べさせ、離れた場所に種を運んでもらうことによって生息域を増やしていました。そのため、みかんの木に鳥が集まるのは自然なことなのです。

しかし、人間が食べるために丹精を込めて育てているみかんを鳥に食べられてしまっては元も子もありません。そのため、寒さが厳しくなる時期には防鳥ネットを張ることがあります。

みかんの種

収穫

十分に果実が熟したらいよいよ収穫です。みかんの収穫は、果実を一つ一つはさみで切っておこないます。木の本数が多いほど収穫に時間がかかるため、大人数で一斉に収穫することもあります。

みかんの収穫時期は品種によって大きく異なります。極早生(ごくわせ)品種は9月から収穫が始まり、早生(わせ)・中生(なかて)品種の多くは霜が降りる前の11〜12月に収穫が終わります。

晩生(おくて)品種は年を越して1月以降に収穫されることもあります。温州みかん以外の柑橘である中晩柑は、遅いものだと4〜5月まで収穫が続きます。三ヶ日町では、ほとんどの農家が12月中に青島みかんの収穫を終えるため、1月以降に出荷されるみかんはすべて貯蔵庫で貯蔵されていた貯蔵みかんになります。

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貯蔵みかんについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

選果

収穫したみかんは倉庫に運んで「選果」をおこないます。選果は、果実の大きさや傷の有無で果実を選別する作業です。傷が多くてそのまま出荷できないものは加工品に使われます。JAみっかびには共同の柑橘選果場があり、糖度や酸度、外観について、最先端の各種センサーを用いて選果がおこなわれています。

三ヶ日みかんの主力品種である「青島みかん」は、収穫したあとすぐには出荷されず、専用の貯蔵庫で貯蔵されます。みかんを貯蔵すると水分が飛び、酸味も減って濃厚な甘さに変化します。

おわりに

長い作業を経てようやくみかんは出荷され、全国に配送されてご家庭へと届きます。この記事でご紹介した作業は代表的なものであり、実際にはさらに多くの作業がおこなわれています。

みかんがどのような過程で手元に届くのかを想像しながら食べれば、より一層みかんの味わい深い美味しさを感じられるのではないでしょうか。

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