自動でミカンを選別！AI選果場は三ヶ日みかんの縁の下の力持ち

1. そもそも選果・選果場とは？
2. 三ヶ日みかんの選別プロセス
3. 新柑橘選果場、建設の理由
- 3. 1. 理由(1)：ミカン農家の方の労働環境を改善したい
- 3. 2. 理由(2)：ミカン収穫期の人手不足
4. 新柑橘選果場の効果
5. 最新技術で選び抜かれた、三ヶ日みかんをお楽しみください！

2021年11月1日、本格的な人工知能（AI）でミカンを選別する柑橘選果場を新しくオープンし、11月6日から稼働させています。
柑橘（かんきつ）選果場としては、AIの活用は日本初の取り組みです。
1時間の処理能力は66.9トンにも上り、日本三大ミカン産地の１つ、三ヶ日みかんの出荷を支えます。

通称「AI選果場」。JAみっかびがこのような施設を建設した背景には、みなさまに品質のいいミカンをお届けしたいという想い、ミカン生産者の労働環境を改善したいという想いがありました。
「AI選果場」についてご案内しながら、稼働開始までの裏側をご紹介します！

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そもそも選果・選果場とは？

「選果（せんか）」とは、農作物を大きさや品質別に選別する作業のことです。果物の場合、この品質を「等級」で表し、上位の等級ほど、糖度や見た目の色、形などが優れています。良い品質のものを適正な値段で購入する値付けの目安にもなります。

参考｜みかんの等級ってなに？三ヶ日みかんの最高ブランド・ミカエースとは？
みかんを箱で購入する際、「秀」や「優」などの表示がついているのを見たことがあるでしょうか。みかんは、収穫の時期や品種によって糖度や酸度が異なります。そこで、規格を統一して品質の揃ったみかんを出荷するために、糖度や酸度、外観に基づいて”秀品””優品”などの区分が設けられています。
https://mikkabimikan.jp/blog/40

農作物は自然の環境の影響を受け、時には台風に見舞われることがあります。そんな中でも「選果（せんか）」をすることによって供給する農産物の品質を安定させることができます。
買う側としても、良いミカンも悪いミカンも混ざった玉石混交よりは自分が求める品質のミカンを買えるほうが嬉しいですよね。

選果過程でみかんに衝撃を与えると、品質低下や腐敗の原因となってしまいます。そこで、人の手に触れたり、ベルトコンベア上を転がしたりする工程を極力減らすことが求められます。
選果場は、農作物の選果作業をより効率的におこなえるように設計された施設です。サイズや成分を測定するための、専用の設備が導入されており、この機器の性能が、選果の精度を左右するのです。

三ヶ日みかんの選別プロセス

三ヶ日高校の跡地3.3haに立てられた、JAみっかびの新選果場。国内最大規模の柑橘選果施設には、荷受けから選果、箱詰めまでを一気通貫でスピーディーにおこなうシステムが整っています。その各工程を詳しくご紹介します。

STEP1：搬入

畑で収穫されたミカンは、各農家の倉庫や貯蔵庫で管理され、出荷の前日に選別を行ってから、選果場へ運び込まれます。こうした運搬は専用のパレットで行われ、効率的に大量のみかんを素早く仕分けることができます。

トラックから降ろされたミカンは、パレット式自動倉庫に一時的に保管されます。この際、どこの園地でとれた誰のミカンかが分かるように、IDボールの電子チップに記録され、ボールはミカンと一緒に投入されます。
複数の生産者が同時に出荷するため、生産情報の追跡が難しいのですが、高度な管理体制がそれを可能にしています。選果結果のデータは園地と紐づけされ、後の栽培管理に活用されます。

STEP2：一次選別

パレット式自動倉庫から出庫されたコンテナは、まず「一次選別」をおこないます。一次選別では、人の目でミカンを観察し、腐っているものや大きな傷があるものを取り除きます。

STEP3：鮮度保持の処理

一次選別の終わった果実を専用の装置で特殊な光を照射します。これによって果実が傷んだり腐ったりするリスクを下げ、より鮮度の高い状態でみかんを供給することができます。この光によって、みかんの味や風味が変化することはありません。

STEP4：光センサーによる選別

腐敗の兆候があるミカンを取り除いたら、いよいよAI選果機の出番です。AI選果機は以下、 2種類のセンサーとカメラ、判定システムから成り立っています。

内部品質センサー
腐敗果センサー
外部品質カメラ
AI（人工知能）判定システム

28条あるセンサーが高速に流れる１個１個のミカンを測定し、人の目では見分けづらい腐敗の兆候のあるミカンを省きつつ、味(等級)・サイズが近しいもので箱詰め指示を出していきます。
なお、1条で1秒間に8個の測定を行います。28条あるので、1秒あたり200個以上のミカンを測定できます！

内部品質センサー

内部品質センサーは光を照射し、糖度とクエン酸（酸度）を測ります。糖度や外観が良いものほど等級が高いですが、糖度と酸度のバランスが、三ヶ日みかんの美味しさの秘訣。酸度も測定することで、美味しいミカンを選ぶことができるのです。

腐敗果センサー

特殊な光を当てることによって、目視では判別が難しい生傷を検出します。小さな傷でも腐敗の原因となってしまうため、品質維持のために重要な工程です。

外部品質カメラ

外部品質カメラは、超高解像度の外観カメラで果実の全周を撮影し、大きさ、形状、色づき具合、傷の面積を測定します。鮮やかなオレンジ色は、甘く熟したみかんの印です。

AI（人工知能）判定システム

そして、こうしたセンサーで得た情報をもとに、搭載されている人工知能（AI）が外観の良否を判定します。
2018年から膨大な果実サンプルで学習をすすめ、数値化の難しい外観を高精度かつ１果ずつ、判定することができるように。
結果、これまで検出できなかった傷みつつあるミカンをより高い精度で排除することが可能になりました。

STEP5：ミカンを等階級ごとに箱詰め

選果機を通過したミカンは、全長約80ｍの長いＰＫ式選果コンベアへ流れていきます。コンベアは指定の場所で、ピアノ鍵盤のようにミカンをやさしく降ろし、垂直方向に流れるベルトコンベアで指定の等階級の秤量機に送られます。

JAみっかびでは、4㎏や8㎏の段ボールまたはコンテナの状態でミカンを出荷しています。計量も箱詰め作業も自動でおこなわれ、箱を傾けてセッティングすることでミカンに与える衝撃を軽減するように工夫されています。

STEP6：高速ソーターによる移動

箱詰めされたミカンは、「高速ソーター」と呼ばれる選別ラインに載せられます。高速ソーターは箱のバーコードから等階級を読み取り、１時間に１万ケースを仕分けします。

STEP7：ロボットパレタイザーによる仕分け

パレットへの箱積みはロボットパレタイザーが自動で行います。

新柑橘選果場では、複数の等階級を混載することが可能となり、完全に自動化されました。パレットは11型レンタルパレットに刷新され近年の物流事情に対応しました。

STEP8：製品出荷

その後、自動倉庫で一時保管されたみかんは、市況や注文状況と照らし合わせながら順次出荷され、トラックが各市場へと運んでいきます。
１パレットには８キロ入りダンボールで８４箱、トラック1台には一度に１６パレットを載せることができます。（約１０トン）
１ケースにはＭサイズのミカン、一つ１００グラムが約８０個ほど入っているので、トラック1台の中には約１０万個のミカンが入っていることになります。

こうして、品質の揃った味の良い三ヶ日みかんがお客様の元に届けられています。

新柑橘選果場、建設の理由

柑橘としては日本初となった、AIを活用した選果場。

最新のICT技術やロボット技術を駆使し、最先端の農業の実現を目指す取り組みが「スマート農業」として注目を集める昨今ですが、なぜ、JAみっかびでこのような取り組みがなされたのでしょうか？

理由(1)：ミカン農家の方の労働環境を改善したい

三ヶ日みかんの出荷前には、「家庭選果」といって、大きな傷やサイズを一定程度揃える作業を農家の方々が行っています。

したがって、みかんシーズンが到来すると、昼はミカンの収穫→夕方~夜にかけてミカンの家庭選果→朝に旧選果場へと搬入と一日中働くことに。

肉体労働なため、ご高齢の方はとくに疲労が溜まる繁忙期となっていました。

理由(2)：ミカン収穫期の人手不足

では、繁忙期のみミカンの収穫や家庭選果をお手伝いいただくアルバイトを雇ってしのごう！としても、そもそも経済的負担となりますし、なにより人手不足によりサポートしてくださる方がなかなか見つからない事態もありました。

ミカンの収穫が多くなればなるほど大変さは増す状態で、ミカン農家の方々の負担は明確でした。

そこで、家庭選果の負担を軽減するべく、収穫した状態からそのまま搬入して出荷ができるよう、新たな選果場を建設しました。

新柑橘選果場の効果

新選果場が稼働して約1年。実際に運用されて、どのような効果があったのでしょうか？

効果1：ミカン農家の労力 40%削減！

繁忙期における家庭選果の負担が減り、労働時間の約40％を削減。ミカン農家の方々の負担の軽減に成功しています。

効果2：ミカンの出来をデータで共有！農家さんのモチベーションアップに

また、各農家に選果による等階級・腐敗の有無・病気の有無のデータをフィードバックする仕組みを整備することができるようになりました。
この結果、収穫量以外にもミカン栽培の成否を測ることが可能に。
名前を伏せた形で、パフォーマンスは農家全体にも公開されており、自身の立ち位置を確認し、次年度以降のモチベーションアップにもつながっています。

効果3：品質の安定したミカンを消費者にお届けできる確率が向上

そして何より、消費者の方々へ、高品質のミカンを安定してお届けできるようになったことが効果として挙げられます。
せっかく配達されたミカンの箱を開けて、もし傷んでいたら悲しいですよね。
人工知能はまだ発展途上ですが、お買い求めいただいたお客様に、一層安心を提供できるようになったのはJAみっかびとしても嬉しいところです。