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「隔年結果」とは?みかん生産には"表”と"裏”がある

「隔年結果」とは?みかん生産には"表”と"裏”がある

はじめに

みかんは今では日本人にとって馴染み深い果物になっていますが、かつては人々の嗜好性の変化や市場の状況の影響を受けて生産量が大きく減少したこともありました。また、みかんの生産量は短期的にも変化し続けており、その背景には「隔年結果」という自然現象があります。今回は、この2つの長期的・短期的なスケールの両方からみかんの生産量の変化を解説していきます。

日本のみかんの生産量

日本でのみかん栽培は明治時代に本格的に始まりました。当時は現代と比べてみかん全体としての生産量が少なく、また、果物やお菓子などの嗜好品の種類も数えるほどしかなかったため、みかんは甘い果実として希少価値が高い存在でした。そのため、戦前までは一般の人々にとってみかんはあまり身近な存在ではありませんでした。

戦後、景気が上がるにつれて徐々にみかんの栽培面積は増えていきました。1960年代にはみかん栽培が農業の成長部門に位置付けられ、急激に生産量が増えました。こうして、みかんは日本人にとって身近な果物となったのです。

1970年代に生産量はピークを迎え、温州みかんは年間300万t以上生産されるようになりました。しかし、この頃になると食生活が多様化し、甘いお菓子を安く買えるようになったり、果物の輸入自由化によって外国産のオレンジが日本に入ってきたりしました。その結果、競合が起こってみかんの価格は暴落してしまいます。減反政策も取られたため、栽培面積は減少の一途を辿ることとなりました。現在ではみかんの生産量・消費量は最盛期の1/5程度にまで減っています。

しかし、需要が減ったからといってみかん農家は諦めませんでした。昔ほど大量に売れないのならば、その分みかんの質を高めようという発想のもと、近年ではみかんも高級路線へと転向しつつあります。栽培技術を高めて既存の品種の品質を改善したり、現代人の口に合う新品種を開発して売り出したりと、柑橘市場は昔に比べてはるかに多様化しています。単純に消費量だけからは読み取れない変化が現在進行形で起きており、今後も柑橘から目が離せません。

三ヶ日みかんの生産量

三ヶ日町でのみかん栽培は江戸時代に始まり、明治時代に本格的に広がりました。この時代、三ヶ日町に何があったのでしょうか?そして、誰がみかんを育てはじめたのでしょうか。以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

三ヶ日町では現在、1年間におよそ3万tものみかんが生産されています。日本全国のみかん生産量が80万t前後であることを考えると、決して少ないとは言えません。「みかん離れ」にも負けず、有田みかん、愛媛みかんと並ぶみかん栽培の大産地として、三ヶ日町は今後も躍進を続けていくことでしょう。

隔年結果とは?

隔年結果とは、収穫できるみかんの量が多い「表年」と、収穫量が少ない「裏年」が交互に繰り返されることをいいます。隔年結果はみかんに限らず多くの果樹で発生する現象です。農家にとって、生産量が変動することは収入が不安定に増減することを意味するため、できるだけ避けたい事態です。

不思議なことに、「表年」と「裏年」は日本の全てのみかんの木に共通しています。もし表年と裏年が木ごとにバラバラに訪れるのであれば、日本全体のみかん生産量は大きく変化しないはずですが、実際の生産量を見ると1年ごとに増減を繰り返しており、隔年結果が全国で一斉に起きていることが分かります。

隔年結果の原因

隔年結果の原因は厳密には分かっていませんが、いくつかの理由が推測されています。一つ目は、気温や降水量が年によって異なることです。それによって花の付きやすさが変化し、結実する実の数に影響を与えると考えられます。

二つ目は、前年の冬に実をつけた枝には花が咲かないというみかんの性質が原因と推測されています。つまり、すべての枝にみかんの実がなった場合には、その翌年は花が全く咲かなくなるということです。

気温や降水量などの自然条件はどうにも変えようがありませんが、二つ目の原因、すなわちどの枝にどのくらい実をつけるのかということは人間にもコントロールすることができます。 そこで、木になる実の数をコントロールして隔年結果の影響を小さく抑えるため、主に2種類の対策がおこなわれています。

隔年結果への対策

1つ目は、畑に植えている全ての木から適度にみかんを間引きするという方法です。隔年結果が、木が翌年実をつけるためのエネルギーを使い切ってしまうために起きる現象だとすれば、1年で消費するエネルギーを抑えることで毎年安定した収穫量を得られるはずだ、という考え方です。実際の手順としては、特に表年に「摘蕾」や「摘果」などの間引き作業をおこない、強制的に来年の花をつける場所をつくります。これらの作業については以下の記事でご紹介しています。

2つ目は、畑に植えている木のうち、半数の木には果実を一切つけず、もう半数の木にはたっぷりと果実をつけさせ、翌年には実をつけさせる木を入れ替えて同じことをするという方法です。隔年結果の表年と裏年を操作し、それぞれの木が2年に一度、全力でみかんを作れるようにするという考え方です。

みかん栽培の場では、果実を適度に間引くことで毎年安定した収穫量を確保する前者の方法を導入している農場が特に多いのです。こうした栽培技術の向上によって現在では隔年結果の影響は小さく抑えられるようになっています。

隔年結果の影響は、収穫量だけではなくみかんの品質にも現れます。裏年は、木が少ない果実に栄養を集中させるため、しっかり実が締まったみかんができます。また、サイズも大きめになります。

一方で、表年は実が多くつくため、間引きをしないと果実が小さめになりやすく、糖度も上がりにくくなります。ただし、木に適度に着果のストレスがかかることで逆に糖度が上がることもあります。

このような表年と裏年の特性を踏まえて、どちらの作柄でもみかんを美味しくつくるために着果量をコントロールしています。

おわりに

みかんの生産量について、長期的・短期的な変化の要因をご紹介しました。生産量を増やし、みかん栽培を盛り上げるためには、やはり食べて応援することが1番の早道です。美味しいみかんを食べながら、未来のさらに美味しいみかんとの出会いに期待しましょう。

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